平成20年度は10月6日から10月31日までの19日間, 23名の受講生を対象に食品製造施設における実地演習3回を含んだハードな研修を実施しました。
到達目標(SBO)は ①GHP(Good Hygienic Practice)及びHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point; 危害分析・重要管理点)の考え方に基づく食品衛生監視指導業務を実践できる、②食品衛生監視指導業務における現状、問題点、課題等を明確にした上で、それら改善・技術向上に必要となる手段方法を検討し、解決に向けた調査研究を遂行し、その結果に基づく実践ができる、③的確な業務遂行に必要となる事業者等との円滑な意見交換や指導助言、所属する組織内外への正確な情報提供やプレゼンテーションができる、でした。
内容は、食品製造施設がHACCPシステムによる衛生管理及びその前提となる施設設備の衛生管理等一般的衛生管理を行うことにより総合的に衛生を管理しているか、監視する能力を身につけるものです。そのために、まず、HACCPの基本概念、特に危害分析の考え方について、しっかり学習及び演習を行いました。また、アメリカFDAが水産食品のHACCP規則の遵守状況を監視するため、FDAの監視員向けに衛星放送を活用して全米で実施したトレーニングのライブテープを用いて、HACCP及びその土台となる一般的衛生管理に関する監視の基礎を講義、演習課題及びグループ討議を行いながら学習しました。
食品工場における演習では、予め工場における製造工程およびそこで行われている衛生管理について予習した上で、事前に工場のHACCPプランを見ないで、自分達で工場内をwalk throughしながら, フローダイアグラムの作成、危害分析の実施、さらにはHACCPプランの作成を行いました。その後、工場が実際に使用しているHACCPプランを見せて頂き、研修生達が作成したプランと比較し、その違いについて議論しました。さらに、工場がHACCPシステムの一部として実際に作成している記録を見せていただき、記録のつけ方に問題がないか監視演習を行いました。実施演習にご協力いただいた工場は次の通りです。
①宮島醤油株式会社宇都宮工場及び株式会社マルハニチロ宇都宮工場(栃木県宇都宮市、第1週目)
②森永乳業株式会社東京多摩工場及びロッテアイス株式会社日野工場(東京都、第2週目)
③株式会社あじかん静岡工場及びハウス食品株式会社(静岡県、第3週目)
工場の皆様、及び工場選定にご協力いただいた宇都宮市、東京都及び静岡県の食品衛生主管課の皆様にもこの場を借りてお礼申し上げます。
また、この講習を受講することにより、「対米、対EUの輸出水産食品の取扱い要領」に規定する指名食品衛生監視員の条件を満たすことになるため、両通知の概要の講義、過去に実際に行われたUSFDA及びECのFood and Veterinary Officeによる我が国の査察の概要、実際に対EU輸出水産食品施設を監視指導している自治体の指名食品衛生監視員の方の経験談、及び業界の立場で対米輸出水産食品の衛生管理を指導している方の経験談等も聞きました。
さらに、研修生がこれまで経験したHACCPに基づく食品衛生監視指導に関連する課題を次の4つのグループに分けて検討し、成果を最終週に発表しました。
①食品衛生監視員の資質向上について
②HACCP施設監視時のチェックシートの作成について
③中小企業へのHACCP導入のためのマニュアル作成について
④異物混入事例からのHACCPプランへのアプローチ方法について
本研修の内容は総合衛生管理製造過程の承認施設、対米、対EU輸出水産食品施設の監視指導のみならず、今後HACCPに基づく衛生管理を行おうとしているすべての食品営業者に対する監視指導に活用し、地域における一層の食品の安全確保に生かして欲しいと担当者一同は願っております。
研修主任 豊福肇(研修企画部), 副主任 寺田宙(研修企画部)