研修: 2011年8月アーカイブ

 本年度の短期研修「住まいと健康」は、6月13日から3週間、17名の受講者を迎えて行われた。保健師の参加がなかったことは残念であったが、県や政令市・中核市の保健所から環境衛生監視員の参加を得て、新たな演習への取り組みなど期待以上の成果をあげることができた。
 健康な暮らしを支える住宅の確保については、先進諸国が有する住居法を日本は例外的に根拠法として持たないため、保健所行政は住民への情報提供・啓発事業を独自の取り組みとして展開する必要がある。環境衛生監視員の一般的業務はいわゆる営業六法の許認可であり、監視指導という対物保健の範疇であるため、それとは大きく異なる住居衛生業務については地域ニーズや住民サービスなどへの理解が鍵となる。本研修では、この自治体の取り組みを担う公衆衛生技術者を養成することを目指し、最新の「住まいと健康」に関する体系的知識を提供する講義のほかに、演習、見学のプログラムが用意されている。演習では、実際の現場での事業展開に役立つような課題について、グループワーク等で議論しながら具体的成果をつくるもので、見学は環境や健康に配慮した住宅を実際に目で見、手で触れる機会を提供している。
 今回のグループワークでは、住居衛生に関する情報提供・啓発を行なう際に活用できる教育媒体(講習会用教材、パンフレットなど)づくりと、住居衛生に関する事業評価の試行の二つの課題について、それぞれチームを編成して取り組んだ。前者についてはこの数年、同様の課題で取り組んでいるものであるが、後者については上述したように住居衛生業務の特殊性からその必要性を重視して、今年度から本格的に取り組んだものである。教育媒体づくりのグループワークでは、戸建て住宅/集合住宅居住者向け「安全な水の管理」パンフレット、旅館営業者/保育施設教員向け衛生害虫啓発スライド、快適な室内環境と省エネの両立を目指した住民向けパンフレット、乳幼児・高齢者に関わる人への熱中症予防の啓発資料、が成果物として最終日に提示された。従来では、成果物(たとえば情報提供用パンフレットなど)の内容に関してはデータの収集・整理は十分になされるものの、そのパンフレットがどのようなニーズを持った人たちに、どういう機会に情報提供され活用されるのかについてはあまり関心が払われなかった。今回は、もう一つの事業評価演習の本格的導入によって、その点が少し改善されたように思われた。職場に戻ったのちに、これらをベースにしてさらに工夫が加えられ、活用される機会が持たれることを期待している。なお、これらのグループワークは研修参加者同士の貴重な情報交換の場となり、修了後のネットワークづくりにも生かされるであろう。
 次回の「住まいと健康」研修は平成25年の開講を予定している(来年度は「建築物衛生」研修を開講)。この報告でも、研修内容について少し理解していただけたかと期待しているが、保健師と環境衛生監視員による相互理解と連携こそが本課題への対応の突破口と確信している。保健師の研修参加を期待するところである。

(研修主任 鈴木晃)

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