短期研修「食肉衛生検査研修」が6月22日~7月17日に実施されました(受講生35名)。本研修は、地方公共団体の食肉衛生検査所等において、と畜検査員又は食鳥検査員として3年以上の実務経験を有する獣医師を対象に、食肉の安全確保と衛生管理向上を図るために最新の専門知識と技術を習得することを目的に実施しています。
今年の本研修への応募者数は35名(定員30名)、定員を上回る人数が参加となり非常に充実した研修となりました。研修の内容についてですが、主に講師先生方(大学教授や厚生労働省など)による学術的な講義や食鳥肉処理施設における実地演習を3回受けさせていただきました。特にHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point; 危害分析・重要管理点)やCampylobacter食中毒の海外や日本における現状を取り上げる等、公衆衛生分野の新しい考え方が多数盛り込まれており、また、実際にHACCPを取り入れている処理場への視察も行ったことで、これら公衆衛生分野における最新の知見に対してより理解を深めることができました。その他にも「テーマ研究」として毎年、受講生があらかじめ用意してきた特定のテーマを元に、ある程度のグループに振り分け、受講生同士がディスカッションをするグループワークも実施し受講生間の意見、情報交換ができるような工夫もされていました。こうした1ヶ月間のグループワークを経て自分達が課題にしていたテーマから一つの見解を打ち出していくのは、他機関における現状や問題点・今後の展望などが聞ける意味でも大変勉強になりましたし、受講生間の親交をより深めることができたと感じています。
また、今年から本研修で習得した知識などを今後の仕事でどのように活かしていくか他の受講生や講師先生方の前で発表する「Plan of action presentation」という時間も研修の最終日に設けられました。この研修で何が自分にとって重要か?この研修で得た知識をどのように活かそうと考えているのか?と、いったような同じ研修を受講した仲間が、何を考え何を感じていたのかを聞くことで今回の研修の内容を自分の中で反芻できるような場が設けられているのは良い試みであると思います。
ただ、他の受講生の方々に感想をおうかがいすると、「講義の進行について受講内容を講師先生から受講生へ一方的に伝達しているだけになっており、講師と受講生(現場)との間に距離を感じたまま、ただ受講しているだけになっているという思いもあった」という意見もありました。せっかく最新の知見を踏まえたすばらしい講義内容だけに講義の進行についても考えていただけたらと思います。
いろいろと書かせていただきましたが、本研修の内容は食肉衛生分野のみに係わらず、公衆衛生分野において幅広く活用できる内容であったと思いますので、ここで得た知識や受講生・講師先生方との繋がりを公衆衛生事業全般で活かしていければと思っています。
<食鳥処理場視察風景>
岡山市食肉衛生検査所 武本 晋哉