本年度の短期研修「住まいと健康」は、6月8日から3週間、17名の受講者を迎えて行われた。受講者として想定していた保健師の参加がなかったことは残念であったが、県(都)や政令市の保健所から環境衛生監視員の参加を得て、新たな演習への取り組みなど期待以上の成果をあげることができた。
健康な暮らしを支える住宅の確保については、オフィスビルを規制している建築物衛生法のような法的根拠をもたないため、保健所行政は住民への情報提供・啓発事業を独自の取り組みとして展開する必要がある。本研修では、この自治体の取り組みを担う公衆衛生技術者を養成することを目指し、最新の「住まいと健康」に関する体系的知識を提供する講義のほかに、演習、見学のプログラムが用意されている。演習では、実際の現場での事業展開に役立つような課題について、グループワークで議論しながら具体的成果をつくるもので、見学は環境や健康に配慮した住宅を実際に目で見、手で触れる機会を提供している(写真はUR都市機構「都市住宅技術研究所」の屋上緑化)。
今回のグループワークでは、住居衛生に関する情報提供・啓発を行なう際に活用できる教育媒体(講習会用教材、パンフレット、相談マニュアルなど)づくりと、住居衛生に関する事業評価の試行、の二つの課題について、それぞれチームを編成して取り組んだ。教育媒体づくりのグループワークでは、新人の住居衛生担当職員向けの相談マニュアル、建築部局・福祉部局向け連携づくりのための啓発資料、両親学級で出前講座を行なう際の参加型教材、が成果物として最終日に提示された。職場に戻ったのちに、これらをベースにしてさらに工夫が加えられ、活用される機会が持たれることを期待している。なお、これらのグループワークは研修参加者同士の貴重な情報交換の場となり、修了後のネットワークづくりにも生かされるであろう。
次回の「住まいと健康」研修は再来年の開講を予定しているが(来年度は「建築物衛生」研修を開講)、このテーマについては科学院のインターネットを活用した遠隔教育でも研修の機会を提供している。「住まいと健康」に関する基本的な知見について講義風景を動画で配信するもので、詳しくは科学院のホームページの募集要項をご覧いただきたい。