近年の公衆栄養・地域栄養活動は健康日本21地方計画,食育推進地方計画,医療制度改革、生活習慣病対策の健診・保健指導などにおいて一層期待され、また求められています。
都道府県、政令市の保健所等で地域栄養業務に従事する本研修対象者の行政管理栄養士数は約1,400名(都道府県、政令市) であり、行政管理栄養士の配置状況は1人または少数配置が多い状況です。
そこで、公衆栄養研修では、公衆栄養・地域栄養活動現場に於けるリーダ-育成と位置づけ、5年以上の実務経験者を対象としています。
一般目標(GIO)を地域の健康づくりを推進する公衆栄養・地域栄養活動のために、政策に併せた公衆栄養診断、公衆栄養計画・評価に至る総合的調整が可能な能力・技術を習得し、コ-ディネ-タ-としての役割を遂行できることとし、同時に仲間づくりも期待しています。
平成20年度の研修は8月11日から9月5日までの20日間。20日間だからこそ可能な演習を多く組み入れ、29名を対象に実施しました。
到達目標(SBO)は ①専門的公衆衛生従事者として必要な基本的概念について理解し、説明することができる。 ②公衆栄養の動向を理解し、地域における問題点を把握し、それを説明することができる。 ③公衆栄養診断の基本的理念とその方法を理解し、具体的に地域栄養診断を行なうことができる。④健康増進計画に基づいた公衆栄養計画・評価計画を作成することができる。 ⑤公衆衛生従事者として公衆栄養の動向を踏まえ、公衆栄養診断、公衆栄養計画・評価に至る内容についての人材育成ができることです。
内容は、前半に行政職かつ専門職として必要な理論の習得と科学的根拠に基づいた公衆栄養診断(テ-マは糖尿病等生活習慣病)の分析テクニックについて4班でのグループ演習)を、後半はヘルスプロモーションに基づいた保健計画の中での地域栄養プログラム計画・評価(食育、生活習慣病予防をキーワードに子ども、成人を対象に4班でのグループ演習)を行いました。またSWOT分析、ケースメソッドなどの演習も取り入れました。
演習時は特に討議、発表を繰り返したハ-ドスケジュールであり、夜は冷房の消えた暑い部屋でしたが、遅くまで目を輝かせながらの積極的、意欲的な様子がとても印象的であり、いづれの発表も素晴らしいものでした。
終了時には開講時に発表した「公衆栄養の課題」について改めて1ヶ月の研修を通じて振り返り、またマニフェストの発表で研修を修了しました。
研修生の声に「管理栄養士としてなすべき仕事がみえた、楽しんで仕事が出来そう。法的根拠や改革の中身を十分に理解できていないことに気づいた。地域診断には身近にあるデ-タの活用、読み込みの大切さ、問題意識をもってデ-タを見る必要性、見抜く力の重要性を感じた、どの場面でどの検定方法が必要か理解できた。公衆栄養計画には科学的根拠に基づいた地域診断の必要性を痛感した。評価を考慮した計画作成の必要性、論理的な考え枠組みやワ-クシ-トを用いたプログラム作成の大切さを痛感した。業務を見直すキッカケとなった。学び得たことを現場で生かしたい。今後は科学院仲間と情報交換をしながらの自分・自分たちの仕事の正当性を示したい。」などが出されていました。
研修生の今後の活動強化の仲間づくりとしての平成20年度同窓会名がつき、その発会式が行われて解散となりました。
研修内容は同職種に留まらず、健康づくりにかかわる多くの方々にも伝達し、情報や技術を共有して地域独自の地域栄養活動や地域保健活動に生かして欲しいと担当者一同は願っております。
研修主任 佐藤加代子(生涯保健部公衆栄養室)