地域保健活動において、中核的役割を担うべき中堅保健師は、時代に即応した専門的な実践力と、行政推進能力を兼ね備えることが必要となります。また、管理的・リーダー的立場へ向けたさらなるスキルアップと、新人期の保健師育成への関わりなど、期待される役割は多種多様です。しかし、全国的に中堅保健師の配置実態は、保健・福祉・介護保険部門等への少数・分散配置がすすみ、部署によっては事務量が業務の大部分を占め、地域全体の健康課題を捉え、システム化のための企画・実施・評価を行う実践そのものが困難な実態がみられ、中堅期としてのスキルアップの向上が課題とされています。本研修では、中堅保健師に求められる役割を理解し、地域のニーズに応じた必要な地域ケアシステムを開発し、総合的な調整が実施できる能力を修得することを目的に、前期7日間(平成20年8月25日~9月2日)、後期3日間(平成21年1月14日~1月16日)の計10日の日程で実施しています。例年、研修への応募および受講者人数は研修定員を超過しており、また受講保健師の所属も、都道府県や中核市・政令指定都市のみならず、市町村自治体からの受講者も増加している傾向にあり、中堅保健師を対象とした研修の必要性の高さがうかがえます。具体的な研修内容としては、前期研修では院内外の講師から、昨今の公衆衛生の動向を踏まえた中堅保健師に求められる役割、地域のニーズに応じたケアシステムの考え方、活動のモニタリング・評価などについてその基本を学び、さらに、プレゼンテーションの理論やスキルに関する実技を含めた講義も行います。演習では、実際に各自がかかわっている平常業務の中から1つのテーマを取り上げ、ケアシステムの視点をもち、地域住民を主体としたPDCAの基本にたちかえるグループ演習を実施しました。限られた研修時間内では不足する検討点などについては、研修生が主体的に時間外にも学びの場を設けるなど、積極的・意欲的な研修への参加の様子がみられ、各自の学びを深めるとともに、全国の中堅保健師という同じ立場に立つ仲間同士の交流も深められました。前期研修の成果として、日常の活動や事業をあらためて検証することによって、事業内容ありきの視点にとどまっていたことへの気づき、プロセスそのものの重要性への理解が深まった、など多くの感想が聞かれました。後期研修までの約4カ月間は、前期演習の成果を職場へと持ち帰り、職場内や関係者などを交えた検証や、合意形成への働きかけ、さらなるステップアップへの見直し、活動のモニタリングと評価など、前期の学びを統合させる実践の展開期間として位置づけています。前期研修でそれぞれの取り組むべき課題を明確にし、モチベーションを高め職場へと戻られたみなさんが、各自その取り組みを成果として後期研修へと結びつける再会を、担当者一同心待ちにしています。
研修主任 奥田博子(公衆衛生看護部)