「児童虐待防止」研修;2008年6月30日(月)から7月4日(金)
「児童虐待防止」研修には、例年定員枠を超える全国の地域保健部門の保健師、児童相談所や市福祉部門の保健師等に参加していただいています。
児童虐待は、社会的関心の高まりもあってその相談件数も年間約4万件を超える勢いです。その中から多くの被虐待児童が保護される一方で、無念にも救えなかった虐待による死亡が年間100人を数えます。児童虐待の防止に公衆衛生の立場で携わる保健師は、この現実に時として、無力感、焦燥感、疲弊感に押しつぶされそうになります。地域という人が暮らしを営む土壌で児童虐待という悲しいからくりが今もどこかで繰り返されています。
生まれてきた命が、思いきり笑い、泣き、怒り、甘える感情をあたり前にだすことを守られる子育て環境を築くために、今求められるのは、虐待問題を認識した子育ての社会化と地域間格差の解消です。そのためには自治体、専門家、住民に浸透させる努力と各段階での援助の標準化を目指さねばなりません。
研修の5日間では、課題にしっかりと向き合うために必要な知識や技術の習得さらには機能・役割の確認をし、解決の道筋を描きだすためのリーダーシップを発揮できる力を身につけていただいています。プログラムは、児童虐待を公衆衛生として捉えることはもちろん、児童精神医学、精神医学、小児科学、心理学や児童福祉学、社会福祉学、法学、臨床法医学に基づいた知識に現場の実践活動、面接技法演習、厚生労働省の今後の展望などを織り交ぜて、予防、強制介入(分離・親権剥奪)、再統合、社会的養護、地域づくりなどの実践に結びつく形で構成しています。
子どものいのちと親の苦悩という重いテーマに浸る5日間ですが、研修受講生の必死感はあっという間に伝導し、研修受講したものの特権ともいえる全国のネットワークもガッチリ組まれていました。皆さんが獲得したネットワークをフル活用して、静かなる熱い想いを実践に落とし込んでいただきたいと思います。
そして今後も科学院とのつながりもお忘れなく、いっしょに子どもを守り抜ける社会の創成にエネルギーを注ぎ合いましょう。21年度も共に学ぶ仲間のご参加お待ちしています。
「虐待防止」研修 担当主任 中板育美(公衆衛生看護部)