◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◆   国立保健医療科学院同窓会 メールマガジン(第54号 2012/3/13) ◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◆ ★☆ メールマガジン第54号 ☆★ 【掲示板に書き込み募集中】 _________________________________ □ 目次 [科学院だより] ○研修案内「公衆衛生看護管理(実務管理)研修」 ○平成18年度特別課程公衆衛生看護管理コースを受講して (公衆衛生情報2011.2号より著者及び出版社の許諾を得て転載) 「現場では得られないスキルと自治体を超えたネットワークが財産に」 ________________________________ ●研修案内「公衆衛生看護管理(実務管理)研修」 ○平成24年度研修日程は? 前期:平成24年5月21日〜29日 7日間 後期:平成25年1月16日〜18日 3日間(全日程10日) ○研修対象者は?  実務管理者(リーダー)の立場にある行政保健師を対象とします。 ○研修内容は?  実務管理者の保健師として期待される役割や機能を総合的に理解でき、 実践業務へ応用できるために必要な理論やスキルを講義や演習を通じて 習得していただきます。  演習ではリーダー保健師として地域ケアシステムを構築し推進するた めの役割が発揮できることをめざします。前期では各自の実践活動の中 からテーマを絞り地域ケアシステムの構築の視点に立った地域診断, 計画策定を行います。後期までの間は各自の職場へ戻り、前期研修で 立案した計画に沿った地域ケアシステムの構築の実践を行います。 後期研修ではその結果に基づく評価を行います。この前期から後期研修 までの約7ヵ月間は職場での実践となりますが必要に応じメールなどで 担当教官や研修生同士のネットワークによるサポートも行っております。 ○実際に研修を受けるとどうなるの?  平成23年度研修受講生の感想(一部抜粋)による成果をご紹介いたします。 「経験知中心だったのが、日頃の活動をあらためて整理し、仕事を全く 違う捉え方をすることができることに気づいた。」 「地域ケアシステムについて理論の講義だけでなく、演習で学ぶことで 理解が深まった。前期と後期で分かれていることで実践とリンクして学ぶ ことができた。」 「これほど充実した学習の機会は卒業以来のことです。日々の取り組みに 対し、どこで達成とするのか自分で決めることに教官から丁寧な指導を いたただいた。自分の中での変革が今後の仕事の中で表出されてくるもの と思います。」 ○積極的なご参加をお待ちしております!!  研修は、院内外の多種多様な講師陣による講義や演習に加え、同様の立場 にある保健師が一同に介し、互いの意見交流により学びを深められる機会 ともなります。例年当研修には県保健所,政令指定都市以外にも、中核市や 市町村等からも受講を希望される保健師が増加し、定員を大幅に上回る応募 があり実務管理者として全国に幅広いネットワークを持つ貴重な機会とも なっております。お申込みはお早めに! 研修主任:奥田博子(生涯健康研究部) _________________________________ ●平成18年度特別課程公衆衛生看護管理コースを受講して (公衆衛生情報2011.2号より著者及び出版社の許諾を得て転載) 「現場では得られないスキルと自治体を超えたネットワークが財産に」         福島県中保健福祉事務所(県中保健所)         生活衛生部医療薬事課感染症予防チーム  古川綾子 −プレゼンテーション演習等の要点はいまでも重宝−  国立保健医療科学院で実施されている行政保健師等向けの「公衆衛生看護 管理コース」を平成18年度に受講させていただきました。研修受講から 4年が経過し、その研修内容を現在の業務に実践できているのかどうか、 当時の研修資料を取り出しつつ、研修後の活用について自己評価をしてみま したので、報告します。  国立保健医療科学院で実施されている「公衆衛生看護管理コース」は、 「公衆衛生看護活動の管理者として、期待される役割や機能を総合的に判断 でき、実務業務へ応用することができる知識と技術の習得」を目的として 行われています。対象者は、都道府県、政令市等に勤務し、管理的(実務 リーダー)にある保健師で、定員は40人となっています。私が受講した 平成18年度には、5月22日から6月9日までの15日間の日程で開催 され、都道府県25人、政令市・中核市・特別区17人の計42人の受講者 でした。  研修内容としては、保健活動の評価を中心とし、ディベート、ケース メソッド、プレゼンテーションなどのスキルを身につける個人やグループ での演習が多く行われ、グループ演習では、メンバー同士で時間外などにも 国立保健医療科学院の宿舎内で検討を重ねたり、資料作成などを行ったり しました。このような機会は、自身のスキルアップのみならず、各地域から 参加している受講者の仲間との交流の場となり、演習内容の共有はもちろん、 それぞれの地域における実践の情報交換の時間ともなりました。  また、ディベートやケースメソッドなどは言葉として知っていても、現場 ではなかなか学ぶ機会がない活動手法でもあり、それらを学び、演習できた ことは有意義でした。なかでも、プレゼンテーション演習は、自分の弱みを 感じることができ、とくに有意義だったと感じています。当時の演習の際に 使用した評価表は、いまでも私の手帳に挟んでおり、現在の仕事のプレゼン テーションの場面でも、その要点について確認し、気をつけるように心掛け ています。  さらに、公衆衛生看護管理コースでは、ほかの課程受講者との合同演習も あり、他職種と協働の作業を行うという経験もできました。現場では、 他職種と打ち合わせはしても、突っ込んだ議論までする機会がそれほど多く はないので、視点の広がりを持つことができ、意義深いものとなりました。  研修期間であるおよそ3週間にわたって職場を離れたわけですが、私に とっては就職後、最も長い研修期間となりました。長期の研修に参加する ためには、職場の理解と同僚の協力が不可欠ですが、そのような長い期間に わたり、私を研修の場に送ってくれた職場と同僚等には感謝の気持ちで いっぱいです。  一方で、国立保健医療科学院で行われているほかの研修コースの状況を 見てみると、たとえば公衆栄養研修は15日間、薬事衛生管理研修は 25日間、食品衛生監視指導研修は14日間などとなっているのに対し、 行政保健師向けの研修については、平成22年度の場合、公衆衛生看護 管理者研修(実務管理)と(人材管理)の2コースとなり、それぞれ 10日間と、スクーリング4日間+遠隔学習の2コースとなるなど、 保健師が参加できる研修の「公衆衛生看護」に関する研修時間が縮小されて おり、大変残念に思います。 −研修が契機となり、受講生と情報交換してつくった現任教育指針−  さて、ここからは、当時の研修を現場でどのように活かしているかに ついて、簡単に述べたいと思います。  研修直後には、県保健福祉事務所(保健所)から提案して予算をつけて もらった事業がありました。その企画書の作成、プレゼンテーションに 研修で取得したスキルを活用し、比較的スムーズに予算を獲得したことを 覚えています。ただ、研修で多くの時間を費やした「保健活動の評価」に ついては、事業を企画、立案する上での手法そのものより、その「考え方」 のほうがより有効に活用できているのではないかと思っています。その 「考え方」とは、たとえば事業内容は目標に沿っているかを確認すると いったことです。  また、研修後には、平成19年度における公衆衛生看護管理者研修で、 修了者の1人として、その受講者にお話をさせていただく機会を与えられ、 研修後の1年を振り返る良い機会になりました。さらに、平成21年度には 県内の保健福祉事務所における「保健事業評価の研修」でも、市町村の 保健師、栄養士等を対象にお話をさせていただく機会を得ました。お話を させていただく機会を持つたびに、研修の内容を振り返り、自分の活動を 評価することができたと感じています。今回、この原稿を書かせていただ いたことも、忘れてしまっていることを確認し、明日からまた日々の活動を 評価していかなければならない、と再確認する機会となっています。  さらに、研修受講の成果と言えるかどうかわかりませんが、研修期間中に 現任教育のあり方について、各地域での取り組みの情報をいただいたことが きっかけとなり、「福島県でも!」という思いを抱き、保健師教育プログラ ムの作成に関わった経験があります。そして、平成19年2月に設置された 「保健師現任教育検討会」に参加させていただき、20年3月には 『福島県保健師現任教育指針 福島県保健師教育プログラム』を完成させる ことができました。  この作成にあたっては、国立保健医療科学院での研修で一緒になった他県 の方々よりメーリングリストなどを通じて情報提供をいただき、大変 助かった記憶があります。こうしたネットワークができたことも大きな収穫 と言えます。  現在、私は全国保健師長会で役割を持たせていただいているのですが、 同じ研修を受講した方と一緒に活動をさせていただいています。研修を 通して知っていた方がいることで、保健師長会の活動にも安心して積極的に 参加することができています。 −自治体の研修が弱体化するいまこそ国レベルの研修が必要−  ところで、保健師教育をめぐっては、基礎教育とともに現任教育について もさまざまな課題が指摘されています。  なかでも、行政に働く保健師の研修は、これまで国や都道府県等が企画・ 実施するなど比較的恵まれた環境にあったと思われますが、近年は業務に 関する研修はある程度行われる一方で、保健師活動全般またその本質を熟慮 するような研修がほとんどなく、しかも職場外研修として保健師のスキル アップをはかる機会が大きく減少している現状であり、行く末が憂慮され ます。県や市町村における研修に至っては、それにかかる予算(開催経費、 旅費等)が削減され、受講者も少なくなり、終了となってしまった研修すら あります。保健師の配置が多分野にわたり、仕事の体制も業務分担制となり、 保健師活動を”総体”として捉える機会が減少しているいまこそ、全体を 広く見渡せる研修を行う必要があるのではないでしょうか。  行政に身を置く保健師として業務を続けているなかで、国立保健医療 科学院での研修は私にとって大きな財産となっています。同期や国立保健 医療科学院公衆衛生看護部の皆様には、改めてお礼を申し上げたいと思い ます。そして、これからも引き続き、宜しくお願い致します。 _________________________________ 発行 :国立保健医療科学院同窓会