◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◆   国立保健医療科学院同窓会 メールマガジン(第30号 2009/2/24) ◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◆ ★★ メールマガジン第30号 ☆★  現在、トピックスを掲載しているBlogに障害が発生しております。 同窓会の皆様にご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。 対応を随時メールマガジン・ホームページ等でお伝えいたしますので、 いましばらくお待ちください。 【掲示板に書き込み募集中】 __________________________________ □ 目次 [科学院だより]  ○科学院往来  ・花田信弘 口腔保健部長退任挨拶 __________________________________ ●科学院往来 「歯の健康とサルートジェネシス」  鶴見大学教授(前口腔保健部長):花田信弘  昨年6月に口腔保健部長を退任しました。この場を借りて退任のご挨拶を 申し上げます。私は平成5年6月に岩手医科大学助教授から国立予防衛生 研究所(現国立感染症研究所)口腔科学部長に着任して以来「予研」、 「感染研」、「科学院」において合計15年間にわたり部長を務めました。 このたび歯学部からの度重なる招聘を受けて横浜に転出しましたが、 後任の三浦宏子部長とともに、これからも科学院とともに口腔保健の推進に 貢献したいと思っております。  在職中の思い出としては、厚生労働科学研究「口腔保健と全身の健康の 関係についての総合研究:主任研究者 小林修平国立健康・栄養研究所長 (当時)」の分担研究者(後に主任研究者)を務め、医学と歯学のはざまに 位置する研究を10年以上継続したことが挙げられます。この研究で得られた エビデンスを健康日本21計画策定委員会と内閣府新健康フロンティア戦略 賢人会議専門分科会の議論に反映させ、それぞれに「歯の健康」を入れる ことができました。  なぜ、歯の健康が健康づくりに必要なのでしょうか?その原因はつぎの ように考えられます。1)歯の喪失により栄養バランスが好ましくない方向に 変化する。 2)歯の喪失により咬合状態の変化が起き、それに付随して 様々な生理的症状が引き起こされる。3)長期にわたる歯周組織の慢性 炎症により炎症性サイトカインが持続的に産生される結果として様々な臓器の 障害を惹起する。4)歯周病の悪化とともに歯周組織に起因する菌血症が 頻発し、持続的に血管内皮細胞へ悪影響を与える。5)エンドトキシン(内毒素) である歯周病菌細胞壁のLPSが様々な分子に悪影響を与えている。  以上のことから、歯の健康は栄養、運動、休養、たばこ、アルコールと 同様に生活習慣病の共通危険因子になっています。しかし、歯の健康の影響は 共通危険因子という範疇に止まりません。近年の高齢社会では病因論に基づく 疾病予防中心の健康づくりではなく、健康生成論(サルートジェネシス)に よる健康づくりが注目されています。サルートジェネシスにおいては単に 病気でないという状態ではなく、健康を志向する前向きな気持を持って積極的 な社会参加ができるかどうかが重要になります。歯の健康は食べる・しゃべる 機能を支えますから、サルートジェネシスにおいて中心的な位置を占めます。 歯の喪失と歯周病は、悪臭(口臭)、見た目の悪さ、発語不明瞭を招きます。 そのことによって自ら社会参加を控え、あるいは社会参加を拒絶されることに なります。このような関係性の喪失が高齢社会では問題なのです。高齢者の 健康づくりは、歯の健康とサルートジェネシスの密接な関連性を理解すること から始めなければなりません。  今後は本院をはじめ厚生労働省研究機関で得られた人間関係を生かして、 我が国の健康づくりへの貢献を続けたいと思います。皆様のご指導ご鞭撻の ほど、よろしくお願い申し上げます。 ___________________________________ 発行 :国立保健医療科学院同窓会