◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◆   国立保健医療科学院同窓会 メールマガジン(第28号 2009/1/28) ◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◆◆ ★★ メールマガジン第28号 ☆★ 同窓会ホームページ更新!(http://www.niph-doso.gr.jp)  トピックス更新! 【掲示板に書き込み募集中】 __________________________________ □ 目次 [科学院だより]  ○科学院往来 ・辻村企画調整主幹新任挨拶  ○研修案内 ・医療ソーシャルワーカーリーダーシップ研修  ・薬事衛生管理研修  ○情報提供  医療安全推進における今後の課題―地域における医療安全推進の取り組み                       (政策科学部) __________________________________ ●科学院往来 ・辻村企画調整主幹新任挨拶  昨年7月に着任して、早いもので、半年が過ぎようとしています。 新任者の自己紹介文をメールマガジンに載せるので書けと言われました。 日頃、家で励んでいる家事のやり方を書こうと思っていると表明したところ、 「他の方は今までやってきた研究の話などを書かれているようですよ。」と やんわりと言われました。これまで一貫したテーマで研究を行ってきたわけ ではありませんし、職場を変わる毎に仕事のテーマも変わっておりました。 私の前の職場(愛知県にある国立長寿医療医センター)で、縁あって 「(終末期の)在宅医療の推進」を検討する機会に携わりました。 私自身としては、有意義かつ面白く充実した経験だったと思っていますので、 ここに記すことにします。  それまで在宅医療の「ざ」の字も知りませんでしたので、何をすれば よいのか全く見当もつきませんでした。そこで、取りあえず熱心に取り組んで いるお医者さんを見学することとしました。紹介いただき仙台のK先生の クリニックを見学に行きました。大規模な診療所で常勤医師5名、 外来を持たない訪問診療専門のクリニックです。丸一日、先生に同行し、 患者さん宅へ訪問させていただきました。その中に家族性のALS罹患の 患者さんお宅があり、発症した奥さんと娘さん(40歳代)を70代のお父さんが 看護している家族がいました。発症したお二人は人工呼吸器を装着して いましたが、自宅で長期間ケアを受けていました。その時も、2人のヘルパー さんがいて、当日の後には訪問看護師さんも来る予定となっているとのこと でした。字面だけでは相当悲惨で深刻な状態であると思われますが、 お父さんが「いい顔」をされているのが印象的でした。望んだ状態でない ことは確かですが、その状態を日常と受け止め、ある種「充実」して 過ごされていました。その家族を、医療・ケアの関係者が手助けしている ことや相当高度な医療も在宅で実践できるのだと実感しました。 お父さんからは、本当に、いろいろ示唆に富むお話を伺うことができました。 その際、酒瓶がテーブルの上にありましたので、酒好きの私は、「お父さん、 お酒は飲まれるのですか?」と馬鹿な質問を発してしまいました。 「ええ飲みますよ、まあ、深酒はできませんけど」との返答がありました。 K先生お一人が希な成功例かどうなのか確かめたくて、勉強会などで知り合った 他の先生の診療活動も見学させていただきました。小山のO先生、松戸のW先生、 滋賀の山の中のH先生、鹿児島のN先生、地元(愛知)東海市のI先生などです。 それぞれやり方に多少の違いはありますが、同じように質の高い医療が実践され、 患者さんや特に家族が「いい顔」をしているのが印象的でした。医師が信頼され、 患者さんや家族の人生に自然と深く関わっている姿を見て、医療不信とは 対極の姿がここにあると思いました。  高齢社会のわが国で、人生の終焉が実り豊かなものとすることが重要な課題と なっています。どのような人生の最期が望まれるか、多くの人にとって、 自分のホームグランドで知己に囲まれて尊厳をもって過ごすことだと私は、 思います。現在、年間110万人の死亡が、2040年には、170万人になると 予想されています。終末期を取り巻く医療・介護の充実が急がれます。 有史以来死ななかった人はいないわけです。病気を治すことが医学の大きな 目的でありますが、人生の終焉に人に寄り添い手助けをするのも意義ある医学の 役割だと考えます。  以下に、私なりに在宅医療推進のための方策をまとめてみました。 ・多くの人に在宅医療の姿を知ってもらうこと  多くの人が自宅で看取りたいと思っているが、介護の負担や急変時の  対応などを考えると無理だと思っている。医療や介護の手助けでそれが  実践され人生を豊かにする姿を知ってもらうことが重要 ・在宅医療を行う医師、看護師、歯科医師、薬剤師など医療関係者が増えること ・急性期医療と在宅医療と切れ目ない医療体制が築かれること  病院は治すところで生活する場所でないこと、病院が患者を囲い込まないこと ・在宅療養支援診療所や訪問看護ステーションの能力強化が図られること  (少し細かいが)  保健医療に関する豊富な学識ある人材が多く所属している保健医療科学院が 在宅医療の推進に知恵を出せればハッピーです。  もう一つ印象深い情景がありました。鹿児島のN先生と末期がんのお父さんの お宅に訪れました。12月の中旬でした。お父さんは、60歳代で、居間のベッドに 横たわり、回りには、奥さんが家事をし、娘さんが生まれたばかりの孫を抱っこ しています。それを穏やかな目でお父さんが見ていました。ゆったりとした 時間が流れているようでした。患者さん宅を後にした後、N先生は「孫に会えた、 次はクリスマスまでが目標で、できれば正月を迎えさせてあげたいな。」との 言葉がありました。 ____________________________________ ●研修案内 ・医療ソーシャルワーカーリーダーシップ研修  平成21年度第1回  「医療ソーシャルワーカーリーダーシップ研修」開催のお知らせ  今日のヘルスケアシステムの特徴は「機能分化の推進」と「連携の強化」に あります。このことについて、サービス提供者は「点(役割の明確な施設)と 線(連携)の関係性」で認識します。一方サービス利用者は保健―医療―福祉に 関するサービスはそもそもシームレスなので「面(コミュニティー)」で認識 しています。「点と線の関係性」の視点と「面」の視点の間には大きなギャップ が存在します。医療ソーシャルワーカーにはそのギャップを解消する役割が 期待されます。 「医療ソーシャルワーカーリーダーシップ研修」では、期待される医療ソーシャル ワーク活動に必要なリーダーシップ機能とマネジメント機能について学びます。 平成21年度第1回目の研修は平成21年5月11日(月)〜平成21年5月15日(金)に 開催されます。研修は基本的に「講義→自己学習→グループワーク」のパターンで 進めます。具体的には、講義により必要な情報を獲得し、毎日宿題(翌朝に提出) をこなすことにより理解を深め、その上でグループワークにより成果物を作成 (最終日に発表)します。 受講応募の詳細については、当院ホームページの平成21年度研修案内を ご参照下さい (http://www.niph.go.jp/entrance/h21/course/short/short_syakai12.html)。 研修の5日間は一つ一つ煉瓦を積み上げるような連続性があります。さらに毎日、 宿題に要する時間を確保する必要があります。したがって研修参加者には、 原則として当院の宿泊施設を利用することをお勧めします。 (研修担当:経営科学部 熊川寿郎) ------------------------------------------------------------------------ ・薬事衛生管理研修  平成21年度薬事衛生管理研修開催のお知らせ  薬事衛生管理研修は国、医薬品医療機器総合機構及び都道府県でGMP/QMS調査を 担当する薬事監視員を対象とし、GMP/QMS調査に必要とされる医薬品、医療機器等 の製造技術、バリデーション、工程管理等GMP/QMSに関する専門的科学的知識、 薬務行政における重要課題について理解・認識を高め、GMP/QMS調査の実行能力を 一層向上させることを目的としております。  本研修は例年5月から6月にかけて行われ、開催期間は5週間に及びます。 この間、講義やフィルター・空調、製剤機械に関する実習、査察演習をとおし、 GMP/QMS監視業務が適切に行えるようになることを目指します。このうち本研修の 中心に位置付けられる査察演習では、主任、副主任の他、医薬品医療機器総合機構 の先生方にもご参加いただき、査察の専門家としての立場からのご意見、ご助言を いただいております。演習は事前準備、医薬品・医療機器の工場の模擬査察、 報告書の作成、発表からなり、例年受講生から高い評価を得ております。  長期にわたる研修で受講生ならびに派遣元の負担も大きいと思われますが、 類似の研修でこれほどの規模・質のものはなく、今後の監視業務のお役に立てると 自負しております。  最後になりましたが、多くの方の受講を主任、副主任一同、 心よりお待ち申し上げます。 平成21年度薬事衛生管理研修募集要項 定員:30名 研修期間:平成21年5月18日(月)- 平成21年6月19日(金) 25日間 受付期間:平成21年2月12日(木)- 平成21年3月13日(金)*郵送にて必着 お問い合わせ先:教務課教務第二係 048-458-6189 詳細につきましては下記URLアドレスをご参照下さい。 http://www.niph.go.jp/entrance/h21/course/short/short_shokuhin01.html ____________________________________ ●情報提供  医療安全推進における今後の課題―地域における医療安全推進の取り組み 医療本来の目的である良質で安全な医療を提供するために、これまで厚生労働省 は医療安全に関する様々な政策実施により、病院および有床診療所に対して 安全管理体制の整備を推進してきた。これに応じて医療機関では、 インシデント・アクシデント事例の発生を予防し、患者の安全を確保するために、 医療安全管理者の配置や施設内職員への医療安全教育の実施など様々な取り組み が進められ、医療安全の質が問われる段階に移りつつある。 さらなる医療安全の推進を目指して、良質な医療を提供する体制の確立を図る ための医療法等の一部を改正する法律が、平成19年4月より施行された。 これにより、一般診療所、歯科診療所、および助産所(以下、無床診療所等) にも、医療安全管理体制(安全管理指針の整備、院内報告制度の整備、および 安全に関する職員研修の実施)の確立が義務化された。 今後、我が国の医療安全をより一層推進して盤石にするためには、これら 小規模の医療機関における医療安全管理体制を構築することは必須の課題である。 また、無床診療所等では、医師や看護師など医療系の職員や医療安全管理に 関わった経験のある職員が少ない、職員が少なく外部の研修受講が難しい、 十分な情報が得られない、などの課題もある。こうした課題に対応して、 無床診療所等における医療安全管理体制の整備を推進するためには、 既に医療安全管理体制の整備を充実させている病院および有床診療所の協力、 地域における医療安全ネットワークシステムの構築が重要なカギを握る。 患者・家族が住みなれた地域で安心して生活できるためには、地域の医療機関・ 医療関連施設すべてにおいて、質の高い安全な医療やケア、支援を受けられる 環境を整える必要がある。医療安全の推進を地域単位で構築していくには、 医療機関のみならず、地域において保健・医療・福祉を提供する、 介護老人保健施設や特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、通所施設(デイケア)、 訪問看護ステーション、および在宅支援センターなど、を含めた医療安全 ネットワークが必要である。地域における医療安全ネットワークシステムを 構築するには、地域の中核病院がすでにシステム化している病診連携などの ネットワークの活用が期待できる。地域単位で医療安全を推進するにあたって、 地域の中核病院の医療安全管理者の役割が重要となる。既に自施設において 経験を積み、活躍されている医療安全管理者が、地域の無床診療所等の 医療安全管理担当者とネットワークを作り、情報提供や医療安全教育への協力など の連携を図ることが期待される。        (国立保健医療科学院 政策科学部長 石川雅彦) ____________________________________ 発行 :国立保健医療科学院同窓会